ミッドウェー海戦で沈没した日本帝国海軍空母『赤城」が米海洋大気局(NOAA)によって水深五千メートル以上の海底で詳しく調査されたと報道された。以前にフィリピン近海に沈む戦艦「武蔵」の調査もあったが、今回は太平洋のど真ん中とも言える場所で、しかも深海の調査だ。技術進歩はすごい。
1942年6月のミッドウェー海戦は、日本が空母4隻を一挙に失った海戦で、日本の劣勢の始まりとされる。失った空母は「赤城」「加賀」「飛龍」「蒼龍」の4隻で、艦載機の艦船攻撃用の魚雷を陸上攻撃用爆弾へ一度は付け替え、すぐまたその付け替えを戻して、魚雷を装着しようとしている空母の混乱の最中に米軍機の襲撃を受け、大敗を喫することになった。筆者は、この基本情報を小学生の時にテレビ番組のおかげで深く記憶している。
そのテレビ番組は、アニメ・ノンフィクション「決断」で、1971年4月から半年間、日テレ系で毎週土曜日夜7:30から放映されていた。当時の小学生の特に男子は夢中でその番組を見ていた。今から振り返れば、戦後25年を経過し、第2次大戦の振り返りや子供達への伝承が始まった頃だったのだと思う。当時の子供心の感想としては、当時の戦闘を特に美化するわけでもなく、かと言って変に卑下することでもなく、淡々とその「決断」によって運命が大きく変わったことを描いていたように覚えている。
その後の50年で戦争史研究は着実に進んだ。ミッドウェー海戦の敗因について解き明かされてきたのは次のようなことだ。
・ 米国は日本海軍の暗号解読に成功していて、日本の出撃を最初から認識していた
・ 直前の作戦まで日本海軍は成功を続けていて、油断からこの作戦計画が杜撰だった
・ その作戦では米空母艦隊との遭遇を想定しておらず、索敵活動も徹底していなかった
・ 南雲司令官は当時の最新兵器だった空母の専門ではなく、意思決定体制も不十分だった
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」とは、江戸時代の平戸藩主 松浦静山の言葉だそうだ。21世紀になっても、全く色褪せることがない、真理をついた言葉に思える。しかし、今の日本社会はどうだろうか?勝ち・負けではないとする向きもあるようだが、日本の国力低下や格差拡大には「不思議はない」はずである。