北朝鮮からロシアへの軍事物資供給

この記事は約5分で読めます。

 昨年できた地割れは、休眠していた断層を活性化させ、加速しながら広がっているようだ。最初に大きく表面化した地割れはウクライナでの戦闘。世界には多くの断層があるが、その一つは韓国と北朝鮮の間の38度線だ。

 「ロシアと北朝鮮 被制裁国同士の合理的な接近」で述べた悪い流れの続報が入ってきているので、ここに記録したい。一つは、北朝鮮からロシアへの軍事物資供給だ。ロイターによれば次の通りだ。

米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は13日、北朝鮮が最近ロシアに軍需品を提供したと発表した。憂慮すべき事態であり、両国間の軍事関係拡大を巡る懸念を引き起こしているとした。
ホワイトハウスは、北朝鮮の弾薬庫から軍需品がロシア船籍の船に積み込まれた後、ロシア南西部の国境にある倉庫に運ばれたことを示す画像を公開。米国によると9月7日から10月1日にかけて行われたという。

(出典 ロイター 2023.10.14 「米、北朝鮮がロシアに軍需品提供と非難 軍事関係拡大を懸念」)

 制裁を受けているロシアに表立って武器を供給する国がイランだけでなく、北朝鮮もそれに加わった。国連安保理決議による制裁を受けている北朝鮮の立場としても、決議内容に反する行為と言えるだろう。

 しかし、ロシアと北朝鮮の両国にとって、今は世界や国連での評判はどうでもよいだろう。彼らにとってのこの戦いに勝利すれば、ストーリーは後から何とでも描けると考えるからだ。東アジアや日本の関心事項には、このことに加えて、ロシアは北朝鮮に何を見返りに提供するのか?ということだ。内容は不明だが、ウクライナ情勢が長引くほど、ロシアが弾薬を必要とするほど、北朝鮮にはその見返りが増えるだろうということだ。ロシアと北朝鮮は、西側から制裁を受けている国同士の仲間となった。何でもありになりつつある。

 北朝鮮関連の2つめは、米空母ロナルドレーガンが釜山に入港したことに対する反発だ。聯合ニュースによれば次の通りだ。

 朝鮮中央通信は13日付の論評で、「われわれの最も威力的で迅速な初打撃は、米国が追従勢力に対する『幻覚剤』として使う『拡大抑止』手段はもちろん、朝鮮半島とその周辺に巣窟を作った悪の本拠地にも加えられるだろう」と威嚇した。
 12日に釜山に入港したロナルド・レーガンのみならず、在韓米軍や在日米軍の基地などを攻撃する可能性もあると脅しをかけたものと受け止められる。

(出典 聯合ニュース 2023.10.13 「北朝鮮 米原子力空母の釜山入港に反発」)

 米太平洋艦隊空母ロナルドレーガンの母港、そして所属する第7艦隊の司令部はいずれも東京首都圏の一部である横須賀だ。何らかの有事が発生した場合、米軍基地が攻撃対象として見なされることは想定すべき事象だ。いまからでも遅くはないので、日本は主体的に国土防衛ないし相手国の自制を促すための抑止策の詳細なシナリオをいくつも検討する必要がある。そして、それらを日本からの提案・要望として事前に米国と粘り強くすり合わせすべきだろう。平和の時代から緊張・対立の時代に世界が変質している。日本は、今まで通りの発想でこの状況を見過ごしてはならない。

 筆者は、米国・西側との同盟関係は必須と考えている。加えて、日本の自助努力として独自の外交・広報と自衛策をはるかに充実させる必要があると考えている。いま、これが大きく欠けている。現在の日本は米国が作ったシナリオやナラティブに思慮浅く、ただ乗るだけだ。危険極まりない状況だと感じている。米国と日本は、安全保障上の利害が完全に一致するわけではないし、地政学的な位置も全く異なるからだ。

【2024/1/16 追記】

2024年1月9日付で米国国務省報道官事務局発の共同声明が出ている。名を連ねるのは、次の51カ国だ。

Albania, Andorra, Argentina, Australia, Austria, Belgium, Bulgaria, Canada, Croatia, Cyprus, the Czech Republic, Denmark, Estonia, Finland, France, Georgia, Germany, Greece, Guatemala, Iceland, Ireland, Israel, Italy, Japan, Latvia, Liechtenstein, Lithuania, Luxembourg, Malta, Federated States of Micronesia, Moldova, Monaco, Montenegro, the Netherlands, New Zealand, North Macedonia, Norway, Palau, Paraguay, Poland, Portugal, the Republic of Korea, Romania, San Marino, Slovenia, Spain, Sweden, Ukraine, the United Kingdom, the High Representative of the European Union, and the Secretary of State of the United States of America

 内容の趣旨は、北朝鮮が弾道弾をロシアに輸出したこと、そしてロシアが昨年12月と今年1月の2回にわたりウクライナに対して使用したことを最大限の言葉で非難するというものだ。また、これらの行為は、3件の国連安保理決議に違反するものともしている。報道によれば、ロシアはこれらは根拠のない言いがかりとして否定している。

 国連の機能不全がますます深刻になってきている象徴と感じる。大きな時代の振り子が良い時代から悪い時代にもっと振れていくだろう。

タイトルとURLをコピーしました