9月18日ロシア領内モスクワの西約400キロにあるトロペツにある兵器倉庫をウクライナがドローン攻撃したと報ぜられた。大きな炎が上がっている様子が動画で公開されている。爆発の規模が大きく、周辺住民は避難しているという報道も出ている。
(washingtonpost.com)
この地図でわかる通り、この地点は国境からロシア領内の比較的奥深い地域だ。500キロほど内陸に入った場所だという。西側のメディアは戦争プロパガンダばかりになっており、この出来事もウクライナ軍の戦果として報道している。筆者は、本当にドローンによる攻撃だったのかについて強く疑っている。また、これはウクライナの戦果ではなく、ウクライナの終わりの始まり、つまり断末魔だと見ている。とても残念なことだ。
本当にドローンによる攻撃だったかを疑う理由は、ウクライナからトロペツの距離の長さだ。低速なドローンがロシア領内でこのような長距離を飛行するのをロシアは探知・阻止できなかったのだろうか?もし、本当にドローンだったなら、容易く迎撃していたはずだ。詳細は不明であるが、もっとスピードのあるミサイルだったのではないか?と疑っている。また、本当にウクライナ領から発射されたのかさえも疑わしい。
先週には、ウクライナの要請でロシア領内深くを攻撃できる長距離ミサイルの使用を西側が許すかどうかの重要なやりとりがあった。このことが公に報道されるとすぐにロシアは明確な反応をした。もしそのようなことがあれば、米国とNATOがロシアとの戦争に直接参加していることと見なすとプーチン氏は明言した。明確なレッド・ラインとしたのだ。
なぜプーチン氏はレッド・ラインとしたのか?西側がウクライナに長距離ミサイルを供与すると言っても、ウクライナ軍が自力のみでこのような兵器を扱えるわけではない。発射のための設定や誘導のための人工衛星情報の利用は、西側の人員の誰かが直接手を下さなければできないものだからだ。ロシア側の真意は、これ以上のエスカレーションの阻止だと思われ、とても論理的だ。
この一方で、米国・NATO側は、どこまでわかっているのか疑わしい。先週、ロシアが明言したレッド・ラインはハッタリと決めつけていないとも限らない。もし、万が一、ロシアが「ドローンではなく、ミサイル攻撃だった」と判断したら、最も避けてほしいNATOとロシアの直接的な紛争になるだろう。
米国・西側の兵器・弾薬の蓄えもかなり低下しており、ウクライナが要請するような量の提供もおぼつかない。これは、イスラエルに対する支援も影響しているらしい。また、米国を含め西側の兵器生産体制は平時のままだ。戦時生産体制をとり、北朝鮮やイランからの供給も受けているロシアとは対照的だ。
ウクライナ東部戦線では、ウクライナは以前に増して劣勢であり、1日に2千人の兵士の死傷者が出ていると見積もる有識者もいる。このような劣勢だからこそ、クルスクやトロペツの攻撃をして、ウクライナ支援を継続する国際世論をなんとか維持しようするゼレンスキー氏の意図も伝わってはくる。簡単に言えば、ゼレンスキー氏は、西側全体を直接巻き込んでしまいたのだ。
ロシア側は冷静な大人の対応を続けている。しかし、何かひとつ間違えば、西側への戦火の拡大がいつ起こっても不思議ではない。何より、バイデン大統領は機能しておらず、米国政権は自動運転中だ。