民主党大統領候補ハリス氏は操り人形だと7月に書いた。(寡頭政治の新たな操り人形 カマラ・ハリス氏)あれから3カ月が経過した。ハリス氏は、スタッフが用意した原稿を基にした発言しかできない。本心で発言すると支持者を大きく失うので、選挙に勝つためだけに、本音とは異なる立場ばかりを発信している。また、特に経済と安全保障・外交については、そもそも内容を理解していないので、見識のなさが筆者のような外国人にさえ明らかに伝わってくる。バイデン大統領出馬断念のあと、密室で任命された大統領候補者ハリス氏は、まさに第4期オバマ政権が世を欺くために送りこんだフロント人物と言われても仕方がないことだろう。
昨日の報道によると、トランプ陣営はCBS番組「60 Minutes」を提訴した。ハリス氏のインタビュー収録の一部で中東問題に関するハリス氏の応答を「聞こえが良い」内容に差し替え、オンエアーしたからだ。「60 Minutes」が仮に報道番組であるなら、ありえないことだろう。また、以前に大統領選ディベート番組を主宰したCNNとABCの両局ともあからさまにハリス氏が有利になるように扱った。主要メディアは、既に死んでいるのである。だからこそ、この場に及んで今さらハリス氏に負けてもらってはメンツも信頼も丸つぶれで困るので、必死にハリス氏を応援するというのが本音だろう。
メディア出演を重ねても実質ある政見インタビューにならず、世論調査で劣勢が明らかになってきた。策尽きたハリス陣営は、ついにトランプ氏をナチス呼ばわりして非難する戦略に出た。ナチスだとすることは、西欧社会では最大級の非難だ。驚くべきことに、主要メディアもこれに乗り、先週末のニューヨーク マディソン・スクエア・ガーデンでのトランプ陣営の大集会を1939年のアメリカのナチス集会になぞらえて報道するありさまだ。正気を失うというのは、こういうことを指すのだろう。
トランプ氏は毒舌だ。そして、2021年1月の議会襲撃事件の関与については大きな疑義を持たれている。「Never Trump」の支持層が根強く残っているのはこのためだ。しかし、一方で、今回のトランプ陣営には、有力な助っ人も多い。副大統領候補に指名されたJD・バンス氏は、同氏の生い立ちや頭脳明晰さ、雄弁さでトランプ氏の欠点を補って有り余るものがある。現実から遊離し、エリートと左翼一派の政党に変容してしまった民主党に見切りをつけ鞍替えしたロバート・F・ケネディ氏、元下院議員タルシー・ガバード氏。そして、異論に対して極端に不寛容で、言論の自由を脅かし始めている民主党に危機感を覚えたイーロン・マスク氏もいる。
ハリス氏は、カリフォルニア州で検事や司法長官を務めた。しかし、政治・政策分野は得意ではなく、大統領を務める能力もないだろう。民主党が強烈に推進する DEI (Diversity, Equity, Inclusion) チェックリストにぴったりはまる「だけ」の人物に見える。他人が用意した政見を自分の言葉で深く語ることができず、ましてや自分の本音や意見も言えない。バイデン大統領の年齢的衰えについては、ハリス氏は近くで見てきたにも関わらず、未だ一言もコメントしたことがなく、質問をはぐらかすだけだ。今年、本来の予備選挙行われていたら、出てこなかったであろう候補者だ。副大統領候補には、自称「おバカ」で弱い男ティム・ウォルツ氏を指名した。それでもハリス氏が勝利する可能性はある。それだけ、トランプ嫌いも広範囲で根深い。
どちらが勝っても、山積した課題解決のために荒れるだろう。三分の一を改選する上院選挙の結果も重要だ。上院での勢力がどうなるかが新政権の船出に大きく影響する。主要な人事任命について承認する立場だからだ。ただ、どんな方向で荒れるにしても、この4年の明らかに間違った方向の繰り返しで荒れるのより、アメリカらしい新たなアプローチで荒れた方が良い結果がでるだろう。