敗因を未だ理解できていない米国民主党

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 大統領選挙人の獲得数で 312 vs. 226 でトランプ氏が大勝した。議会上院は、アリゾナ州を除き全ての州で結果が確定しており、53:46で共和党が過半数をとった。議会下院は、過半数218に対して共和党213議席 vs. 民主党202議席 (11月10日時点) の状態で残りの選挙区の開票集計が続いていて、完全決着はしていない。しかし、どうやら下院も共和党が主導権を握りそうだ。大統領と議会両院の3つの機関で同じ政党が主導する「Trifecta (トライフェクタ)」が実現しそうだ。

 2020年の選挙と比較して今回の政党支持がどのように変化したのか地域的に表した図が次の通りだ。(Financial Times US election results: How Trump won in maps and charts)

 この図で右上と左上に伸びる矢印が変化の方向と大きさを示している。右上に伸びる赤い矢印が全米に広がっていることがおわかりだろう。共和党支持への変化が全米に広がった。

 なぜハリス氏が敗北したのか?経済と移民受け入れ問題について、民意を得なかったからということに尽きるだろう。次の図 (原典は上図と同じ) は、「投票者に最大の課題・争点は何か?」という問いと投票状況を組み合わせたものだ。

 移民受け入れ問題または経済が最重要とした有権者が圧倒的にトランプ氏へ投票したことがわかる。移民については、バイデン政権下で1,200万人とも言われる人たちが適切な入国審査なしで入国している。この移民たちにはさっそく社会保障サービス受給資格が与えられ、医療サービスも受けている。税金が支える制度にただ乗りというわけだ。また、一部は強盗・強姦など凶悪な犯罪を犯すものもいたり、都市部の大きな治安悪化を招くなどの社会問題を起こしている。ハリス氏は、現状を擁護する議論も、あるいはどのようにリーダーシップをとり現状変更するのかの議論のどちらも持っていなかった。

 経済の問題とは、物価高のことだ。コロナ前に比べ日用品やガソリンが3割、4割高くなり、生活が苦しくなっている。コロナ発生直後の緊急時はともかく、それ以降も破格の財政支出を続け、インフレを招いた。しかし、民主党の立場は、物価は企業の「不当な価格つり上げ (price gouging)」だとし、価格統制をするとした。若い人たちが、物価高と金利高でマイホームの購入ができないという悲鳴に対しては、初めてマイホームを購入する人に25,000ドルの補助金を出すとした。どちらも、実行可能性も有効性も不明で、有権者には響かなかった。

 上の図で一番ブルーの面積が大きい部分は、民主主義の擁護だ。これを最重要な課題として圧倒的に多くの民主党への投票があったことがわかる。これは、ハリス氏のメッセージが実質的にこのことにのみ収斂していったことと通じる。トランプ氏は「独裁者」、「ナチス」、「民主主義への脅威」と揶揄するばかりだった。このポイントについては、選挙戦終盤に向け、主要なメディアも一斉にプロパガンダのボリュームを上げた。筆者に言わせれば、社会的集団洗脳近い出来事だ。現在の民主党は、異論に極端に不寛容な姿勢を持つ。そして、その相手を悪魔化し、否定する。このことの不毛さ、おかしさに気づいた人が多かったというところが分かれ目ではなかったかと見える。

 民主主義の擁護という観点では、民主党の方がよほど、おぞましく非民主的だった。2017年トランプ大統領就任直後からでっち上げSteele Dossierでロシア疑惑としてFBIと特別検事の捜査を煽った。大統領在任中は、二回の弾劾提訴を行った。そして、昨年トランプ立候補と知るなり、司法機関と結託し、ありとあらゆる無理筋の訴訟を無数に起こし、政治活動を大きく妨害した。また、バイデン大統領の認知的衰えを隠ぺいし、まずいと見るや、選挙戦途中で予備選挙の手続きなく、ハリス氏へ首のすげ替えを行った。なおまた、現政権に批判的な発言をするものに対してあからさまな圧をかけるありさまだ。「言論の自由」に危機を感じたイーロン・マスク氏が立ち上がり、トランプ支持に回ったのはここら辺のことが大きいだろう。

 民主党や主要マスメディアの集団洗脳状態が解消するのにはまだ時間がかかりそうだ。それゆえ、現政権の残り2カ月の間に何か妨害じみたことがあるかもしれない。しかし、ひとたび新政権が動き出せば、前回よりはるかに素早く舵を切り始めるだろう。主要重要人事の承認がや必要法案の可決については、議会のサポートが得やすい。肥大し、Wokeismに毒された官僚機構をどのように立て直すか、行き過ぎたグリーン政策の巻き戻しと石油・LNG生産の規制解禁、不法移民の対処、国際情勢の中での抑止力回復など重要課題は山積している。

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