ウクライナの悲劇の本当のはじまりと露わになるNATOの偽善

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 今日の報道でウクライナがNATOに対して一種の最後通牒を発したと報ぜられた。ロイターによれば、ウクライナは即時NATO加盟以外のなにものも安全の保障と考えないとした。これなしにロシアとの交渉には応じない姿勢であることを示唆している。ロシアは戦況で大きく有利な立場にある。ロシアから見れば、ウクライナのNATO加盟こそがレッド・ラインだ。この秋のNATOサミット直前のこと、ロシアは交渉を開始する条件の一つにウクライナの中立をあげている。ロシアが受け入れるわけがないのだ。したがって、ウクライナのこの姿勢は、交渉の機会をさらに遠ざけるだけでなく、その時間だけ国土の更なる荒廃と領土の喪失が進むことになる。残念としか言いようがない。

 ロシアは冷静で周到だ。戦時体制を敷き、武器弾薬の増産に余念ない。兵士も月3万人増やしていると見られ、いまや150万人、ヨーロッパで最大の軍隊だ。これまで西側は鳴り物入りの大砲、戦車、装甲車、戦闘機などを支援してきたが、ロシアはうまく対応・中和化し、根本的な戦況はロシア有利のままだ。そして、先月、米英の長距離ミサイルがロシア領土の達したことに対する反応として、非核中距離弾道ミサイルOreshnikを発射した。マッハ10にも至る超音速スピードがあるので既存の防空システムでは迎撃できないと言われる。さらに複数の弾頭を持つMIRV (個別誘導複数目標再突入体) で攻撃目標を広く深く打撃することが可能だ。いまや、ウクライナ国内の軍事関係施設であろうと重要インフラ (例えば送電設備) であろうと、ロシアは意のままに脅かせる状態にある。

 バイデン政権もNATOも今回のウクライナからの発信をはぐらかしている。軍事支援がまず先だというのだ。西側は特に戦時体制の増産をしてもいないので、自分たちが出せる武器弾薬も枯渇しつつあるのにである。これは、ウクライナにとっては酷な話だろう。主要メディアでは情報が抑えられているが、ネット上ではウクライナ軍崩壊の危機が叫ばれて2,3カ月になろうとしている。ワンチャンス狙いで行ったロシア領クルスク方面への侵攻は、成果なく霧消している。投入された兵士と装備のほとんどは殲滅したと見られる。そのせいでウクライナ領内の東部4州の戦線が手薄になり、結果としてロシア軍の進軍を助けることになった。兵士も不足している。NATOは入隊年齢を18歳に引き下げるようウクライナに進言しているそうだが、いまさら未訓練の若者達を少々加えたところで根本的な戦況は変わらないと見るべきだ。つまりNATOは、ロシアに勝たせたくないという身勝手な理屈のために、ウクライナの現実の苦境を見て見ぬふりをしているように思える。

 戦闘ではウクライナの負けは確定的だ。ロシアは進軍を続けているので、領土の損失については、時間が経つほどウクライナはさらに不利になることは明らかだ。今後のロシアによるエネルギーインフラへの攻撃により、寒い冬を過ごせないウクライナ国民の増加も現実的な可能性を帯びてきている。西側は、今以上の難民を受け入れることも困難になるだろう。勝つ見込みが絶えた中での人身損失と国土荒廃は、まさしく本当のウクライナの悲劇だ。

 現実遊離した西側NATOの偽善に見切りをつけ、ウクライナは現実路線で停戦を模索するべきタイミングだ。

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