予想外の関税率と範囲で株式市場が急降下した、その一方で、普通なら米国債の価格が上がり、金利が下がるところだが、反対に金利が上昇してしまった。90日間の一時停止の最大の理由はこれだろう。
米国は今年末までに約8兆ドルの米国債借換えをしなければならないと言われている。約37兆ドルの国債残高に対して、8兆ドルは全体に対する割合として大きくなっている。それは、前財務長官のイエレン氏が短期債で借換えを行ったためだ。目的は、金融緩和に似た効果を持つこの政策により、金融市場を万全に落ち着かせ、民主党体制の維持を陰でサポートすることだったと言われている。FRBによる黙認とセットで実施された不健全な政策だった。
金利が高くなることは、今年の大規模な国債借換えの利率に直結することであり、トランプ政権としてはどうにか低くしたい。また、通商政策の面でも、高金利はドル高を呼ぶので、せっかくの関税作戦に水を差すことになる。ベセント財務長官の当てがはずれたのだ。
トランプ政権が今回の関税政策を行う動機については前投稿で書いた。しかし、保護される産業の業績がよくなる、そこに働く人々の賃金が上がる、といったプラス効果が出るには時間がかかる。また、その効果そのものに疑問をもつ向きも多い。金融市場は、単純に「リスクオフ」、つまり株式も債権も売りとなったのだ。
今月末で就任100日となる。英語でKitchen Sink と言われる「できることは何でも全てやる」のがトランプ政権の姿勢だ。大きな賭けだ。次の中間選挙までには、実感ある成果を出さなければならないプレッシャーはあるだろう。ウクライナの停戦調停は思うように進んでいるとは言えない。中東政策では、イスラエルの意のままに動いている。イランを直接に武力攻撃をするのではないか、という観測もある。ドル現金もリスクがあるというなら、金(ゴールド)に逃げるしかないのだ。