ウクライナとロシアの戦争は自分が起こした戦争ではない、バイデン大統領が引き起こしたのだ、とトランプ大統領は言い続けてきた。就任100日が経過し、そんな言い逃れもできなくなってきた。アメリカからウクライナへの兵器供給は中断されていたのだが、これが再開されようとしている。 (英The Guardianサイト) これまでの武器弾薬供与に比べれば桁違いに規模は小さい。そして、それも有償でウクライナへ売るのだという。しかし、そうだとしても、アメリカからの武器提供が再開すれば、これまでのような仲介者的な立場は取れなくなる。ロシアは、敵に武器を与え続ける国からの「仲介」をどうして受けることができようか。
アメリカは、かくしてバイデン政権が推進していた代理戦争を引き継ぐことになる。おそらくは、ここでアメリカがいきなり手を引いたら、ウクライナの惨敗・崩壊は目に見えているので、そうはならないようにするというのが言い訳であろう。しかし、戦争が続けば、それだけロシアはウクライナの国土を余計に奪い、ウクライナをさらに荒廃させるだけだ。
また、戦争が長引けば、それだけエスカレーションのリスクも増える。5月9日のロシアの戦勝記念日は、ロシアは一方的な短期停戦を宣言した。ロシアは大掛かりな軍事パレードを予定しているらしい。一方で、ここのところゼレンスキー大統領は、その式典を目標とした軍事攻撃の可能性をネット上でほのめかしている。ドローンを多数発射すれば、いくつかは迎撃を逃れ、到達するという考えらしい。
ゼレンスキー大統領は、相変わらず無条件の停戦を主張している。最近では、2014年の侵攻以来ロシアが支配しているクリミア半島についても承認する気はない、と態度を頑なにしている。昨年はロシア領内クルスク地域への逆侵攻と失敗があった。強気でいれば、良いというものではない。もし、ウクライナがロシアの戦勝記念日の式典への攻撃を成功させるようなことがあれば、破滅への大きな一歩となるだろう。ロシアの一般庶民の敵意を煽り、ウクライナへの強い報復が支持されるに違いないからだ。
ウクライナはまず銃を置いて、ロシアとの交渉を始めてほしいと筆者は願うばかりだ。