米国選挙 共和党に勝ってほしいが、どうなるかわからない

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 奇跡的なタイミングで偶然に顔の向きを変え、わずか数ミリの差によって、右耳の負傷だけで難を逃れたトランプ氏。衝撃的な事件であり、命拾いだった。流血しながらすぐに立ち上がり、トランプ氏は右拳を振り上げ「Fight! Fight! Fight!」と立ちすくむ聴衆に応えた。突然に訪れた死の淵から帰還し、本能的にとったこの行動の中には、この人の真実があるだろう。

 銃弾という現物が多くの人の現実感を呼び覚ました。トランプ氏は、まだ心理的ショック状態にあるだろう。これまでとは大きく異なる、柔らかく優しい面持ちだった。これからの自分が変わる、自分を変える大きな契機でもあることだろう。副大統領候補に庶民派のヴァンス氏を発表したことで、二人の役割分担もしていけることだろう。被弾直後のトランプ氏の力強い行動に強い信念とリーダーシップを認めた者が多かった。この暗殺未遂事件のおかげで、共和党大会は強い団結と熱い盛り上がりが続き、大成功だった。

 一方、民主党バイデン氏はどうだろうか?大統領テレビ討論会で高齢による衰えを露呈した。発言の後半でしばしば支離滅裂になるバイデン氏の様子は全米に放映された。風邪気味だった、海外出張の疲労といった口実のもと、一度くらいの失態はやがて忘れられるとタカをくくっていたようだ。しかし、みるみるうちに世論調査の数字が低下した。民主党執行部も看過することができず、オバマ氏、上院・下院の両リーダー、元下院議長のペロシ氏などがこぞってバイデン降ろしに動き始めた。出馬断念は、おそらく時間の問題だろう。

 民主党のゴタゴタは、バイデン氏のテレビ討論会での見栄えだけが原因ではない。そもそも、ホワイトハウスの側近たち、民主党の幹部たちがこれほどの大統領の衰えを知っていたのに、隠蔽していたという不信感だ。10時から16時までしか執務する体力がないと言われ、大抵のことは、大統領自身ではなく、側近と民主党幹部が大統領を操り人形のようにして、勝手に動かしているという認識が広がった。影の第三期オバマ政権ということだ。加えて、ニューヨークタイムス、ウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポスト、CNN、MSNBCといったメインストリーム・メディアもホワイトハウスとグルになって真実を隠蔽していると批判が高まっている。

 なぜ民主党はこんなことをしているのだろう?筆者は、根本に現実感の欠如があると見ている。D.E.I.はその最たるものだ。能力主義を極端に軽んじた結果、さまざまな政府機関が弱体化した。反アメリカの価値観を持つ大量の移民を入れ、犯罪と荒廃が広がっていることに気づくのも何年もかかった。また、本質的には極めて好戦的な対外政策でありながら、どこか「あるべき論」「建前論」で目を曇らせた結果、紛争を抑止できなくなった。この民主党の病は重症だ。治るとして、まだまだ時間がかかりそうだ。

 現副大統領カマラ・ハリス氏は「D.E.I. Hire」だと公言してはばからない人は多い。つまり、指名されたのは、能力やリーダシップがあるからではなく、有色人種女性のその見栄えだからだという意味だ。言葉なめらかに話しても、全く内容がないハリス氏の演説を少しでも聞けば、同感せざるを得ない。

 バイデン氏が出馬中止する場合、ハリス氏が横滑りで大統領候補となる可能性が高い。民主党が候補を変更する手続きを行う時間は限られている。そして、11月の選挙は、民主党ハリス氏+新副大統領候補 vs. 共和党トランプ氏+ヴァンス氏の戦いとなる。現時点では、結果がどうなるか全くわからない。2016年のトランプ氏当選以来、民主党が展開してきたネガティブ・キャンペーンの蓄積は大きい。また、議会上院・下院の勢力バランスも、今後の米国の政策が転換されるか否かで大きな影響を及ぼす。

 もし民主党が勝てば、いずれ欧州でNATOはロシアと直接戦争する道を進む。何をするかわからないトランプ氏の共和党が勝てば、ウクライナと中近東はとりあえずの紛争収束に向かうだろう。経済面では、どちらが勝っても混迷は深まり、日本人にとっては良い要素はなさそうだ。そして、どちらが勝つにしても、せめて大差で勝利してほしい。あまりの僅差だと、双方が選挙結果に異議を唱え、米国内が急速に不安定化するからだ。

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