トランプのワン・エイティ

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 あれだけ和平仲介に注力していたが、突然、トランプ大統領は露ウ戦争に対する姿勢を180度方向転換したように見える。そもそも、来週になったら、また違うことを言っている可能性もあり、いちいちどこまで真に受けるべきかはわからない。以下が、Truth Socialへの投稿だ。

 ウクライナはNATOの支援で自国領土からロシアを追い出し、領土を全て取り戻すことができる。ロシア軍は「Paper Tiger」張り子の虎だ。ロシア経済は弱体化している。ウクライナは今こそ行動する時だ。自分たちはNATOに兵器を供給する。NATOがやりたいようにすれば良い。こんな内容だ。現実からかけ離れた主張だ。

 もし、トランプ氏の発言を額面通り受け止めるなら、停戦ないし和平を仲介するどころか、戦争継続を焚きつけている。この結果、ウクライナ側の損害は更に膨らむだろう。ウクライナは兵力が尽きつつある。西側が提供できる兵器・弾薬は必要量に対して焼け石に水程度のレベルでしかない。

 この一年くらいの間、東部戦線はあまり西方向へ移動してはいない。しかし、これをもってロシア軍は弱体化しているととらえるのは大間違いだ。そもそもロシアはウクライナ全土を武力制圧することに興味を持っていない。ロシア系住民が多い東部州に侵攻・併合し、ロシア系同胞を保護した。それこそが重要な目的の一つだからだ。それ以上は、兵士の犠牲を最小になるよう、手堅く前線を保持・漸進しているだけだ。

 トランプ投稿の最後のセリフ「Good luck all!」は意味深だ。カンタンに訳せば、「あとは、みなの成功を祈る!」。アメリカはNATOから注文が入れば兵器を販売はするが、あとの結果は知らないという姿勢をほのめかす結語として筆者は受け止めた。つまり、バイデン政権が始めた(抑止しきれなかった)戦争を自分は止めようとした。いくら諭しても、グローバリストが主導するNATOとEU、そして特にイギリス、フランスと言った主要国は徹底抗戦の旗を降ろそうとしない。ゼレンスキー政権も同じだ。ロシアも戦場で優位にあるので、要求を取り下げることはない。ならば、ここでトランプは手を引く、という意思表示だ。

 アメリカがこのように少し距離をおく姿勢をとるのは、おそらくは良い方向に作用するだろう。欧州のグローバリストたちは、国際法の観念論でロシアを悪魔化するばかりで、自分たちの負い目からは目をそらし、幻想から未だ目覚めようとしない。自分たちで現実の苦い味を嚙みしめ、自分たちで悟るしかなかろう。

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