部活遠征バス事故が問うもの——形式か、実態か

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福島県の磐越自動車道で、高校生が命を落とした。ソフトテニス部の遠征中だった。17歳だった。大人たちの不手際が重なった末の、あまりにも理不尽な死だ。心からの哀悼を捧げたい。

最近、気になることがある。コンプライアンスや法令順守という言葉が氾濫し、「形式を整えること」が目的化している風潮だ。書類を揃えた、契約書を交わした、ガイドラインに沿った。それで仕事をした気になっている。

今回の事故は、形式の陰に隠れ、誰も疑おうとしなかった前提を砕いた。

運転手は「知人の知人」経由で紹介された68歳の無職男性だった。2種免許なし。事故前から足腰が悪く、免許返納を口にしていた。報道によれば、今年に入ってから複数の事故を起こしており、5日前にも高速道路で事故を起こしていた。これだけの危険信号が揃っていたにもかかわらず、誰も実態を確認しなかった。形式上の「紹介」があれば十分、という空気だ。

学校側も同じ構造だ。「貸し切りバスを依頼した」と言う。しかし実際に来たのは白ナンバーのレンタカーだった。2025年度だけで3回、同じ形態での遠征を繰り返していた。書面もなく、確認もなく、慣行として受け入れていた。何を発注しているのか、自分たちで把握していなかったということだ。

結果として、道路運送法上の白バス行為、2種免許なしでの有償輸送、安全配慮義務違反と、複数の法的問題が重なった。形式を重視するはずの組織が、実態においては法を犯していた。皮肉というほかない。

一部に「所管省庁のガイドラインがない」との指摘がある。的外れだ。運転手の健康状態や事故歴を確認することに、ガイドラインは要らない。生徒を乗せる車両の契約内容を把握することに、ガイドラインは要らない。当たり前のことを当たり前にやれば、この事故は防げた。 形式の整備と実態の把握は、全く別の話だ。この事故はそのことを、一人の若者の命をもって示してしまった。

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