「海のベルト」——イラン戦略の進化と、塞がれた迂回路

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6月8日、IRGCコッズ部隊のカーニ司令官が声明を出した。「ホルムズ海峡からバブ・エル・マンデブまで、ペルシャ湾から紅海まで、抵抗勢力の新たな安全保障ベルトが形成される」。さらに、「国境なき戦士たちがチョークポイントを見下ろしている。攻撃を続ければ、喉元を掴む」と。この言葉は、イランの戦略が質的に大きく進化したことを示している。

イランはこれまで、イラク、シリア、レバノンを貫く「陸の回廊」を戦略の背骨としてきた。ヒズボラ、ハマス、イラクの民兵——陸のプロキシによる中東域内での圧力装置だ。影響力は大きいが、あくまで地域ローカルにとどまっていた。しかし今、イランはホルムズとバブ・エル・マンデブ(紅海出口)の二つの海峡を結ぶ「海のベルト」を宣言した。世界のエネルギー動脈を直接握る戦略だ。ローカルからグローバルへ。「生き残り」から「支配」へ。イランの戦略は、明確に次の段階に入った。

2月28日に始まった米・イスラエルによるイラン攻撃以降、ホルムズは事実上閉鎖された。サウジアラビアは東西パイプラインをフル稼働させ、紅海のヤンブー港経由で原油輸出の70%以上を迂回。この「Plan B」が世界のエネルギー市場の命綱となり、価格の暴騰を食い止める作用があった。

しかし6月8日、フーシ派がイスラエル関連船舶の紅海通航禁止を宣言した。「これは第一歩にすぎない」と。フーシ派の紅海攻撃能力自体は新しくない。2023年から25年にかけて100回以上の攻撃を実行し、商船を沈めた実績がある。

変わったのは、イランの戦略的発信だ。以前のフーシ派は「パレスチナ連帯」を掲げ、イランとの指揮系統は曖昧にされていた。今回、その建前は完全に消えた。IRGCの最高幹部が「海のベルト」を公式に宣言し、フーシ派の指導者もイラン・ヒズボラとの「完全な連携」を表明している。ホルムズを塞ぎ、サウジが必死に開いた迂回路の出口をフーシ派が塞ぐ。新たな二重封鎖の構造が成立しつつある。

サウジの「Plan B」そのものが射程に入った意味は大きい。迂回路の迂回路は、もうない。湾岸諸国にとって、米国の対イラン強硬策を支持し続ける合理性はさらに薄れる。前回の記事で触れたシカゴ大ロバート・ペイプ教授の指摘——湾岸諸国の静かな離反——は、この「海のベルト」によって加速するだろう。

金融市場は戦争が7月初旬にも終結すると織り込んでいる。しかし「海のベルト」が意味するのは、イランがもはや「生き残り」をかけて耐えているのではなく、グローバルな「支配力」を握りにいっているという構図だ。生存戦略なら譲歩の余地がある。支配戦略ではそれは極めて小さくなるだろう。解決の日は、さらに遠のいた。「造られた強気相場」の土台は、一段と脆くなったように見える。

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